テキトー手探り創作雑記帳

創作企画PFCS中心ブログ。書いたり描いたり。

【PFCS】SS『気持ちの在処』

こどもの日過ぎちゃいましたが
性懲りも無くこどもの日ネタでございます
(`・ω・´)キリッ

イチャイチャはしてませんが
ほんのりクォラミ風味でお送りしますよ☆
(少々長めです)



こどもの日SS『気持ちの在処』





ある晴れた日の、午後。


自警団の詰所に、けたたましい足音とともにクォルが凄い勢いで飛び込んできた。

「ら、ラシェちゃんっ!助けてくれ!!」

何やら必死さの混じる慌てたクォルの声が聞こえ、詰所で留守番役をしているラシェは、何事かと奥の薬室から姿を現した。
見ればクォルが、余程慌てて走ってきたのかゼェゼェと息を吐き、布に包まれた大きな何かを大事そうに両腕で抱えながら、入り口でラシェが現れるのを待っていた。
…ただ、おかしな事に、一緒にカイザートに里帰りしていた筈のラミリアの姿が無い。

「お帰りなさいクォルさん。予定より早いお帰りですね。どうかしたんですか?
…それに、あの…ラミさんは…」

「こ、これ!これ!!」

ラシェが何気無く尋ねた言葉に、クォルが食い気味に反応し、今 両腕で抱えているモノを見る様に促してきた。
ソロソロとラシェがそれを覗き込むと、そこにはすやすやと眠る、なんだか見覚えのある様な草色の髪をした…幼い少女。
クォルは呼吸を整え、改めて口を開いた。

「…ラミなんだよ、こいつ」

「え、ええっ?!」

驚きつつも、どうやらラミリアであるその少女を、布…よく見ればクォルのマントに包まれたままラシェが抱っこする様に受け取ると、途端にクォルは はぁぁとやたらと長くため息をついてその場にしゃがみ込んだ。

「とりあえず何か服、探してやってくんねぇか?
…そいつ、小ちゃくなった時、着てた服がデカくてほとんどすっぽ抜けちまってんだ」

「まあ大変!
…分かりました、着替えさせて来ますので、クォルさんは少し座って休んでて下さい。2人もじきに見廻りから帰ってきますから」

「そうさせて貰うわ…」




******



「……妖精ピクシー
もしかして、精霊の里の妖精ピクシーか?」

ラシェがラミリアを着替えさせている間に見廻りから帰ってきたクライドとバトーは、先んじてクォルから事の次第の話を聞かされ、あははと笑った。
どうやら帰り道、精霊の里に程近い森を通った時、魔物に襲われている妖精ピクシーを見つけ、それを助けてやったらしいのだが、
そのお礼として妖精ピクシーに止める間もなく魔法をかけられてしまったらしい。
クォルは椅子にだらりと座り、机に上半身を投げ出す様に突っ伏しながら、深々と疲れに満ちたため息を吐いた。

「はぁ…。笑い事じゃねぇよ…。
ラミは小ちゃくされちまうし、アイツが着てた服はデカくて脱げちまうし、おまけに起きやがらねえから抱えて歩くしかねぇし、死ぬ程疲れたわ!」

「まあ、妖精ピクシーの魔法は、かけられた人間の望みを叶え、幸運を齎すって言われてるし、悪気は無いと思うよ」

にこにこと笑うクライドを、クォルはキッと睨んだ。

「ラミが小ちゃくなる事のどこが幸運齎すっつーんだよ!わけわからん!
おまけに不可抗力とはいえ…、その…い、色々…見ちまったし…ぜってー、俺様 殺される…」

あああーと頭を抱え込んで呻くクォルに、バトーは冷めた目をしてツッこんだ。

「見たっつったって、いつものラミじゃなくてガキンチョになったラミの裸だろ?
そんなん飯の種にもなりゃしねぇし、仕方ねぇ事なんだから堂々としてろよ」

「見てねぇからバトーちゃんはそんな事言えんだよー。見ちまった上に、マント越しとは言えコードティラルまで抱っこしてきた俺様の身にもなれー!」

「…守備範囲●●●●が広過ぎる テメェの所為だろ、知るか」

「うわぁん!バトーちゃん酷いぃ!」

そう ぎゃあぎゃあとクォルが喚いていると、奥の方から ひょっこりとラシェが顔を覗かせた。

「…あ、ご苦労様でした クライドさん、バトーさん。
すみませんが、お二人は少しの間この部屋に居て貰えますか?」

「それは構わないけど…もしかして、例の小ちゃくなったラミリア絡み?」

クライドがそう尋ねると、ラシェはコクリと頷いた。

「はい。
着替えさせてあげようと思ったところ、丁度ラミさんの意識が戻ったのですが、
その…どうも、私達の事が分からないみたいで、ちょっと怯えられてしまいまして…。
お父様とかお母様とか呼びはしているので、もしかしたら、姿かたちと共にあの年齢頃の記憶にまで後退しているのかもしれません」

ラシェが困った様に眉を下げると、疲れた顔で突っ伏していたクォルが、ガバッと顔を上げた。

「…まさか」

それだけ呟くと、ガタンと立ち上がり、クォルはいそいそと部屋の奥に走っていった。

「あ、待って下さい、私も行きます!」

それを見て、ラシェはペコリとクライドとバトーに頭を下げると、慌ててクォルの後を追った。

「やれやれ、
さっきまであわあわしてた奴が急にピリッとしやがって」

まったく、とバトーは肩でため息をついた。
クライドは あははと和かに笑う。

「なんだかんだ言ってるけど、クォルはラミリアの事、いつも一番気にしてるからなぁ。
…ま、我々はここで来るのを楽しみに待っときましょうかね」




******


「ラミのやつ、昔ちょっと怖い思いした事あって、一時期、知らない人間が全くダメになってたんだよ」

ラミリアが居る部屋の前で、クォルがそうラシェに口を開いた。
その言葉に、ラシェが優しく笑う。

「だからなんですね。…お父様とお母様の他に…クォルさんの名前も呼んでました」

「俺様の?…そっか」

ヘヘッと照れ臭そうに口元を緩ませるクォルに、ラシェは思わずニコリと笑った。




コンコンとノックし、部屋に入ると、当のラミリアはベッドのシーツに頭まで包まり、シーツ越しでもわかるほどカタカタと震えていた。

「おい、大丈夫か?」

そうクォルが声をかけると、ラミリアがひとつ大きくビクッと震えたのが分かった。

「…っつっても困ったなぁ、
図体もデカくなっちまったし、声だって声変わりしちまってるし、どうやったら俺が 剣道場のクォル ●●●●●●●だって判るかねぇ」

その言葉に、ラミリアがこっそりと頭を覗かせた。

「…クォル…なの?」

「お、顔出したな。
俺が 剣道場のクォル ●●●●●●●だって、分かるか?」

とりあえずそう尋ねると、ラミリアは躊躇うことなく コクリと頷いた。

「クォルはクォルだもん、分かるよ…。

…ねえ、ここ、ドコ?あたし、また知らない場所に連れてこられちゃったの?
それに、どうしてクォル、そんなに大きくなってるの…?」

色々と訊き終わらないうちに、ラミリアは堪らずポロポロと涙を零し始めた。
そりゃそーだわな、と肩を竦め、クォルがとりあえず頭をよしよしと撫でてやると、ラミリアは ふぇぇ…っと声を上げてシーツにくるまったままクォルに抱きついて更に泣き始めた。

「ぅおお…⁈…な、何か調子狂うぜ」

「ふふっ、クォルさんの事信頼しきってるんですねぇ」

「まあ、確かにあの頃、いつもこんな感じだったわコイツ…仕方ねぇんだけどさ」

ブツブツ言いつつも、満更でも無さそうなクォルに、ラシェは思わずクスクスと笑った。
クォルが腕の中のラミリアの背中をポンポンと落ち着かせる様にあやしてやると、次第にスンスン、と泣き声が落ち着いてくる。
ラシェは頃合いを見計らって、ラミリアにそっと話し始めた。

「ここは、大っきくなったクォルさんが働いてる所で、私は仕事仲間なの。
えっと…服を用意してあげたんだけど、着替えられるかな?」

その言葉に、ラミリアが少し顔を上げ、そして窺うようにチラリとクォルを見た。

「んあ?
あ、ああ、このお姉さんは優しい人だから大丈夫大丈夫。
…何はともあれ、その、なんだ、…服着てくれ、頼むから」

クォルのその言葉に、ラミリアはふと視線をシーツにくるまった中の自分の体に落とし、きゃああっと声を上げ、クォルからバッと離れた。
見れば真っ赤な顔で涙目になっている。
ラシェはそばに用意してあった着替えを手に取りラミリアに渡すと、クォルに声をかけた。

「ありがとうございます、クォルさん。
とりあえず、部屋の外で待ってて貰えますか、着替え終わったら出てきますので」

「あ、ああ、是非そうしてくれ…」



******

「ぅおっ?ホントにラミが ちみっこくなってやがる」

着替え終わったラミリアを連れて、ひとまずクライドとバトーの元へと行くと、開口一番バトーが声を上げた。
当のラミリアと言えば、部屋の外に出た途端にすぐさまクォルに引っ付き、片時も離れない。
バトーの言葉にビクッとすると、クォルを盾にして隠れてしまった。

「何か、全幅の信頼を置いてクォルに引っ付いてるラミリアって…新鮮だなぁ…」

何やら微笑ましいものを見る目でクライドがニコニコと笑うと、クォルは照れたようにニヤけそうな目を無理やり吊り上げた様な…なんとも言えない顔をした。

「…こちとら調子狂って仕方ねえんだけど!」

「何言ってんの。幼児退行してるんだから仕方ないだろ?」

「ぐぬぅ」

ぐうの音も出ずに言葉を飲み込むクォルに、バトーがニヤッと口の端を上げた。

「まあクォル、これが妖精ピクシーの魔法ってんなら、魔法が解けるまでは長くても数日、下手すりゃ1時間もすりゃ元に戻るぜ。
…せいぜい頑張れよ」

「が、頑張るって何をだよバトーちゃんっ?!」

「日頃、お前がラミに、実はしたかった事とかしてやりたかった事?とか?
今はデカイ時の記憶無いみたいだし、お前も変な意地張らずに、せっかくの機会なんだから素直になればって事」

「ンな…⁈」

どうやら反論しようにも、口をパクパクさせて言葉にならないらしい。
きょどきょどとクォルとバトーの会話を聴いているラミリアに、ラシェが羽織ものを渡した。

「良ければこれ羽織ってて下さい。
せっかくだから、クォルさんに色々連れて行って貰ったらどうですか?この城下は綺麗ですよ。お店もいっぱいあって楽しいし、…あ、興味が有るならクォルさんが居ればお城にも入れますよ」

「ほ、ほんと…?」

「はい。あとは広い丘も有るし、大きな農園も」

わぁぁぁと一瞬で顔を綻ばせたラミリアに、ラシェは思わず笑顔がつられてしまった様で、2人でニコニコと笑っている。

「ほらクォル、千載一遇、デート●●●のチャンス」

クライドもニコニコと笑うとクォルは照れ隠しなのか、顔を無理矢理ムッとさせた。

「うっせー!何なんだよ みんなしてよぉ…
わかったよ、なんか、色々、つ、連れてけば良いんだろ!」

まるで自分に言い聞かせるようにそう言うと、クォルは自分に引っ付いているラミリアの手をむんずと掴み、ドカドカと詰所の入り口へと向かった。

「あ、待って下さい!行くならこの鞄も持っていって下さい!」

ラシェが出て行こうとするクォルに、慌てて一つリュックを寄越した。

「ラミさんに何か変化があったら使って下さい。
あ、クォルさんは有事までは開けないで下さいね!」

「?わ、わかった…」

クォルは首をひねりつつ、とりあえず背中に渡されたリュックを背負い、改めて詰所を後にした。
ラシェはホッと胸を撫で下ろす。

「ふう、いつ元に戻っちゃうか分かりませんからね」

「!…ああ、開けるなってそう言う事か」

クライドの相槌にラシェはにこりと返した。

「本当なら私も行った方が良いのかもしれませんが、今のラミさんはクォルさんじゃないといけないみたいだし、…妖精ピクシーの魔法が意図する『お礼』は、ラミさんだけじゃなくて、あの2人ごとにかかっていると思うので」

「そうだなー。
妖精ピクシーの気遣いが少しは効くと良いけどなぁ」




******

「さてと。
…お前、行ってみたいところ、有るか?」

詰所から出てしばらく。
ひとまず、ラミリア自身が小さくなってしまったという事、ここはコードティラルだという事などを話してやりながら歩いていたが、クォルは足を止め、自分が手を引く、腰程の高さに小さくなってしまった幼馴染をふと見下ろす。
物珍しそうにキョロキョロと辺りを見ながら歩いていたらしいラミリアは、えっと…と口に手を充て考えた。

「クォルがいつも働いてるのは、さっきの場所…なんだよね?」

「んあ?…ああ、自警団の詰所の事か。そうそう。
あ、あと、これでも少し前までは城で騎士だったんだぜ」

「えっ、凄い!クォル、騎士様になったの?!」

「つっても、お前もだけどな」

「え、あ、あたしも?あたしが、どうやって…?え?え?」

「まあ、今の●●お前には信じられないかもしんないけどなー、お前、バリバリ戦える様になって、道場の師範代にまでなったんだぜ」

「あたしが、練武館の…?あたし、後継になれた?」

頭に疑問符を飛ばしているラミリアに、クォルは ははっと苦笑いした。

「まぁ、お前に弟は生まれてないし、戦える様になったから後継っちゃ後継だけど、強い婿見つけて来いって言われてる」

「あれ…?で、でも、ファルは?」

「ファル兄は、お前が振ったんだからなー?
ま、あっちは今はスッゲェ良い嫁さんと、子どもが沢山いるけどな」

やれやれと肩をすくめるクォルに、ラミリアはおずおずと尋ねた。

「じゃ、じゃあ…、その…く、クォルは…?」

「へ?…俺様?」

「だ、誰かと、そ、その…」

「?」

ラミリアは真っ赤になりそうな顔をブンブンと横に振った。

「や、やっぱ、いい!今のは、聞かなかった事にして!」

「はあ?まぁいいけどよ…」

首を傾げつつも、クォルはひとまずラミリアの手を引き、のんびりとまた歩き出した。

「そういや俺様は、お前の婿探しのお守りにずーっと付き合わされてんだよなあ…。
そのくせ、ちょっと遊ぼうと思ったら 必ずお前が怒ってさあ、いい歳して独り身だぜ…?あーファル兄が羨ましい…」

「それは、怒るでしょ」

ムウ、と頬を膨らませつつも、ラミリアは少し足取りを軽くさせた。

「ねぇねぇ、クォル!クォルは強くなった?」

「へ?…んー、まぁ、騎士になるくらいは強くなったんじゃね?」

「じゃあさ、ここは道場みたいなところある?あたし、クォルの剣が見たい!」

ニコニコと顔を輝かせるラミリアに、クォルは嬉しい様な困った様な笑い顔を見せる。

「お前、本当にあの頃のラミなんだなぁ…。
…んー、城だとワァワァ煩くなるだろうし…クライドちゃん居ないと本気出せねーし…
…あ、そーだ。ばあちゃんとこにでも行くか」

「ばあちゃん?強いお婆ちゃんが居るの?」

「まぁ、ある意味超強ぇばあちゃんだけど…。
用事があるのは住み込みで働いてるアルファの方だなー。
…よし、行くぞラミ!」





******

農園にやって来ると、丁度エレジア婆と0831が農作業をしている所だった。
事情を説明すると、0831は ポム、と一つ手を打った。

「そういう事でしたらクォル様。ワタシと一緒に害獣退治に行きマショウ」

「あれ?また何か出んの?」

「ハイ。朝、これくらいの大きさの足跡が」

そう言いながら、0831が手で顔ほどの◯を作って見せた。

「お、おっきい!」

ラミリアが目を丸くして口をポカンと開けると、ふむ、とクォルは腕を組んだ。

「獣っつーより魔物だなぁ、そりゃ」

「ええ、少々ワタクシの手にも余りそうで、皆さんに相談しようと思っていたところで。
…ラミリア様が危ない様でしたら、また皆さんが来られた時でも宜しいのデスガ」

「んー。…つっても放っとけるサイズじゃねぇしなぁ…
…よし。ラミ、お前、ばあちゃんと ばあちゃんの家に居ろ。ちゃちゃっと追っ払ってくっから」

クォルがそう言って繋いでいた手を放すと、ラミリアはガシッと腕にしがみついた。

「っうおっ?!なななな何だよラミ!」

「…あたしも、いく…」

「あ、あのなぁ!今のお前、連れてけるか!」

「だって、それじゃあ今のクォルの強いとこ見れないじゃない!」

「そんなこと言ったって、何かあったらどーすんだ!」

「…その時は クォル、守ってくれるんでしょ?」

しがみ付くラミリアに上目遣いでそう言われ、クォルは思わずたじろいだ。

「ぐ、ぐぬ…っ!」

反論できずに呻くクォルに、0831が表情を緩ませ、淡々と言う。

「クォル様は、小さなラミリア様には弱いのデスねぇ」

「なななな何言ってんのかなっ、おやさいちゃんっ?」

「クォル様が元々小さな子供の面倒を見るのが好きだというのは存じておりマシタが…
やはりラミリア様相手だと普段と表情も違って
「わぁぁぁぁああ‼︎」

クォルはそれ以上言わせまいと慌てて0831の口を塞ぐと、真っ赤な顔で脱力した。

「と、とりあえず、仕方ねーから連れてくけど、怖くなっても知らねぇかんな!」

「うん!ありがとクォル!大好きっ‼︎」

そう言いながらしがみ付いていた手でギュウッと抱きつかれ、
…クォルは完全に固まってしまった。

「ふふふ。小さなラミリア様は大胆デスねえ」

0831はその様子に、淡々と、穏やかな表情で優しくそう言った。




******


畑にあった足跡を辿ると、隣接する雑木林の手前で結界の綻びを見つけた。
「チェックが甘かったなぁ」等とクォルがボヤきつつ、そこから更に足跡を追跡していくと、少し離れた方からガサガサと物音が聞こえてくる。

「…おやさいちゃん、見えるか?」

「少々お待ちを」

クォルがラミリアを少し離し、剣を鞘から抜きつつそう尋ねると、0831は目を見開き物音がする方を凝視した。

「…1体、クマの様な魔物デスね。畑にあった足跡と足の大きさが一致しマシタ。
体温や呼吸数から考えると、少々空腹そうな感じを受けマス」

「要警戒、だな。…1匹だけか?」

「そうデスね…ひとまずのトコロは周囲には見当たりマセン」

「りょーかい。
…俺様が少し近付いて誘き寄せっから、おやさいちゃんは先に向こう側に回り込んでくれ。俺様に襲い掛かってきたら同時にアタック。…OK?」

「宜しいかと」

答えるなり0831は手にした鍬を構えつつ、物音一つ立てずに素早く指示された辺りに向かった。
ヨシ、と0831の位置を確認すると、クォルはラミリアをそばの木の裏側に連れていく。

「いいか?ここから動かずに、絶対、物音立てんなよ?」

「…わ、わかった…」

見れば少々震えているのが分かり、クォルはハァ、とため息をついた。

「たく…。連いてくるっつったのお前だろ、ビビってんじゃねぇ」

「だ、だって…」

「まったく…」

『大方、慣れないばあちゃんと2人になりたくなかっただけなんだろうけど』
クォルはポンポンとラミリアの頭を優しく叩くと、さてと、とその場を離れ、打ち合わせた行動を開始した。
ゆっくりと、足下で音を鳴らさない様に魔物に近付き、近付けるだけ近付くと、今一度0831の位置を確認して彼女に目線を送る。
離れた先で0831が相槌を打つ様にコクリと首を縦に動かすと、クォルは一つ深呼吸して、剣を持たない方の手を軽く上げた。
そして、ワザとらしく音を立て 一気に魔物との距離を縮めると、流石に魔物が気付き、こちらに向かって襲い掛かってきた。

「オっ…ラァァッ‼︎」

威勢と共に一気に魔物の巨躯に斬りかかると、魔物も負けじと太い腕を振り回してクォルに襲い掛かる。
魔物に腕を振り上げられた瞬間、魔物の腹に斬撃を叩き込んだクォルと同時に、音も無く近付いていた0831が、手筈通りに背後から、手にした鍬を魔物の後頭部目掛けて振り降ろした。
低く響く様な断末魔と共に、魔物が地面に派手に崩れ落ちる。

「…生体反応の消失を確認しマシタ。クォル様、流石デス」

「おやさいちゃんこそ、鍬片手に、惚れちまいそうな見事な手並みだったぜ」

互いの手をパンッ!と合わせて称え合うと、クォルは剣についた魔物の血を振って払った。
0831もそれに倣って血を払った時、急にバッとある方向を見、目を見開いて叫んだ。

「…8時の方向に生体反応?いつの間に…
…イケナイ、ラミリア様が!」

叫ぶなり0831が8時の方向…ラミリアを待たせた木へ向けて飛び出す。
それにハッとしてクォルも体の向きを変えた時と同時に、ラミリアの叫び声が響き渡った。

「きゃあぁぁぁっ!」
「…ラミっ!!」

見れば2頭の狼がまさにラミリアに飛び掛かろうとしているところで、間に合わないと判断した0831が咄嗟に手にした鍬の柄を狼に向かって矢の様に投げ飛ばした。
それは内1頭に命中し、ギャンッ!という鳴き声と共に地面に叩き落とすと、残りの1頭がグルリと向きを変え、0831に飛びかからんと牙をむき出しに襲い掛かる。
だがそれは、今度は違う方向から回り込んだクォルが飛び蹴りを食らわすことで不発に終わった。

「こいつは食いもんじゃねぇ!あっちに行きやがれ!」

クォルがファイティングポーズを取りつつ、獣の様な眼光で叩き落とした狼達を睨みつけると、狼達は低く唸り声を上げつつも、すごすごとその場から逃げ去っていった。

「ラミ、大丈夫かっ?!」

狼達が居なくなるのを確認したクォルが慌てて駆け寄ると、放心状態でガクガクと震えていたらしいラミリアが、我に帰った様にボロボロと涙を零して わんわんと泣き始めた。

「…だから言ったろうが…怖い思いしても知らねぇぞ、って」

「ふぇぇぇぇ」

「まったく…。…ホラ、来い」

やれやれと肩を竦めつつ、クォルが手を差し伸べると、ラミリアは躊躇うことなく、がばぁっとクォルに抱きついた。

「ぅお?!…ちょ、お前勢い良過ぎんだよ、倒れんだろーが!」

「ワァァァァン!」

怒鳴りつつも優しくあやすクォルの姿に、辺りを再確認していた0831が ふふふっと笑った。

「ラミリア様にお怪我が無くて何よりデシタ。…ひとまず周囲も落ち着いた様デスので、農園に戻りマショウ」

「おう」



******


「…あーあ。すっかり遅くなっちまったなぁ」

農園からの帰り道。
戻ったクォル達に、エレジア婆がお礼にと夕飯を用意してくれた。
外へ出れば日は沈み、辺りは街灯と月明かりだけが煌々と輝いている。

んー、と伸びをして夜の澄んだ空気を吸い込むクォルの傍ら、小さなラミリアの足取りが心なしか重い。

「どーした、ラミ?…疲れたか?」

足を止めてラミリアを覗き込むと、ラミリアが重そうな瞼でコクリと頷いた。
クォルは困った様に笑うと、しゃあねぇなあ、とラミリアの前に背を向けて屈んで見せる。


「ホラ。おんぶしてやっから、乗れ」

「う、うん…」

ラミリアがおずおずとクォルの背中に乗ると、クォルは よいせっと立ち上がった。
クォルは成人男性の中では背の高い部類だ。
一気に目線の高さが変わり、ラミリアは思わず「うわぁ」と声を上げる。

「凄いすごーい!」

「そういや、何度かおんぶした事あったよなー?背格好に大差無ぇから 今みたいには出来なかったけどなー
…あ、眠かったら寝てていいからな」

「う、うん…」

とりあえずクォルがゆっくりと歩き出すと、次第に緊張が解れてきたのか、暫くして、クォルの肩に小さな頭がコテンと倒れてきた。
そして、ウトウトとした声が降ってくる。

「…ねえ、クォル」

「何だ」

「クォル…、強くなったね…」

「…!」

クォルはラミリアの言葉に思わず彼女を返り見た。
肩にコテンと倒れた頭はそっぽを向いていて、彼女の顔は窺うことが出来ない。
ただ、彼女の眠そうな声がポソポソと聴こえてくる。

「…クォルの背中、おっきくてあったかい…
男の子って、こんなに大きくて…強く、なるのね…」

「……っ」

「ねぇ…おっきいあたしも、強く…なれたの、かな…
あたしの所為で…誰も…傷付かない、くらい…」

背中に凭れるラミリアの体が、力が抜けたのか少しずれ、クォルは ヨッと背負い直す。
肩に掛かる規則正しい呼吸音に、恐らくはもう聴こえないだろうと思いつつ、クォルはラミリアの問いに静かに答えた。

「まったく…強過ぎて困るくらいだぜ…?ちっとも俺様に守らせやしねぇクセによ…。
…第一…お前から聞きたかった言葉を、今のお前●●●●が言うなよな…」

クォルは深々と溜め息を吐きつつも、どこか嬉しそうに口元を緩めた。

妖精ピクシーの魔法が幸福を齎らすなんて
眉唾臭くてどうにも信じられないが、
少しくらいは効き目があるのかもしれないのかなぁ…。



背中で眠る小さな幼馴染みを起こさぬ様、クォルは ゆっくりと、静かに詰所までの夜道を歩いて帰るのだった。









◆ fin ◆








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