テキトー手探り創作雑記帳

創作企画PFCS中心ブログ。書いたり描いたり。

【PFCS】SS『あなたに花束を』

『あなたに花束を』




通い慣れていた筈の
今は何もない道を
1歩1歩
過ぎた日を思い出しながら
ゆっくりと歩く

いつもは必ず隣に立ち
手をひく恋人は

私の1歩後ろを
私の足取りを辿りながら
決して追い越す事も無く
静かに歩いている

ゆっくりと

ゆっくりと





「…ええっと、
ここには何が在ったんだっけ」

「そこはパン屋さんですね
朝イチで並ばないと買えない
食パンが美味しくて」





何気無いもの

今は無いもの


その全てを
まるで昨日の事のように
思い出せるのは

こうして
私の記憶を一緒に持とうとする
彼のお陰なのかもしれない



「ああ
ここは大きなラダの木の在った場所で

…右に曲がって
少し歩くと君の家だ」





通い慣れた
今は何も無い場所

それでも私の中では

今でも鮮明に
全てが思い起こせる





「クライド、
いつも ごめんなさい」

「…また…
こういう時は
ありがとう、でしょ」

「そっか…

…ありがとう」




1歩後ろを歩いていた黒い髪が
フワフワと揺れながら私の隣に並ぶ

私が手に持つ物と同じ
1輪の花束を携えて




「こっちこそ、
ありがとう

今日ここに
一緒に来れる事程
光栄な事は無いよ?」




そう言いながら
とても満足そうに
ただ無邪気に笑ってくれる彼を

私の大好きな
あの暖かな笑顔で迎えて欲しかった






『ねえ おかあさん?

私は今、
とても幸せだよ



…ありがとう』






だから今年も、

貴女に2輪の花束を。








◆ fin ◆


参照SS
yourin-chi.hatenablog.jp