テキトー手探り創作雑記帳

個人的な趣味なモノを、書いたり描いたり

【PFCS】SS・ヴィランズストーリー〜リーフリィ〜3

はじめに

お久しぶりでっす!
ひと月前から書いてたヴィランズSSがようやく出来ましたので、
早速いきますよ!

ヴィランズストーリー〜リーフリィ〜3

胎動

グランローグ国は、リーフリィの北方…通称「葉柄」に位置する場所にある。
年中雪に覆われ、雪の降らぬ時期など夏頃だけ。
それもあくまで降らない程度で、秋から冬、春にかけ 大地に積もった雪が溶けきる事は決してない。
故に草木も彩り少なく、群生する木々も紅葉が見られない針葉樹ばかり。
日の差し込まぬ程の高い針葉樹の森は、グランローグと旧フィアルの国境を隔てる様に聳え、以南の土地を長らく断絶させていた。


*****

--グランローグ城。

グランローグが帝国であった頃。
先の戦争で父王を討ち果たし、新たに王国としてグランローグを再興させた若き王・レイガ。
彼は父王が島中に解き放った魔物の残党を討伐し、また、戦争の所為で荒廃してしまった土地を甦らせらんと各地に使者を派遣し、自らも出向き指揮をとるなど多忙を極めていて、
今日もまた、膨大な執務に追われている。

渦高く積まれた書類の山を、決して一文字足りとも見逃さぬ様、一枚一枚丁寧に目を通している彼のすぐそばの机で、同じ様に書類の山と睨めっこをしていたサターニアの青年が、ふむ…とため息をついた。

「--陛下。
南の森の方、ここのところ魔物の動きが活発になっていまして」

そう言い、数枚の資料を手に、彼はレイガの所へと移動すると、レイガの机の上にその書類を拡げ、赤いペンで幾つか◯を付けていく。
拡げられた書類に目を移すレイガは、微かに眉を顰めた。

「……グレン、これは…いつ頃からの状況報告だ?」

「ここ ひと月程を集約したものでしょうか」

グレン、と呼ばれた青年は、再度確認する様に書類の日付を確認した。
数枚に分かれた資料は、確かに確認するとひと月分といったところ。
…それは、グランローグ領と旧フィアル領を隔てる様に張られている、グランローグ以南へと魔物が逃れぬ為の広域結界の、破損状況を報告するものだった。

「あまりにも頻回だな…、
…しかも、…これは?私が張った場所も有るではないか…。
…破損原因は?」

「『内部より無理矢理こじ開けた様な解呪の痕跡有り』、と報告されています」

「……ふん…。…解せんな…」

レイガは、ビンッと報告書を指で弾くと、机の上の簡易的な本立てに立て掛けていた古めかしい大きな本を1冊手に取り、パラパラとめくり出す。

「(あの辺りは国境。通常より強固な結界を、場所によっては この私自らが張っている要所だというのに…
…一体何者の仕業だ…?)」

レイガは、魔力を操る妖怪属の集まって出来たと云われるグランローグ人の中でも、随一の魔力の持ち主だ。
今現在 リーフリィ内のコードティラルを始め、小さな街や村…彼やコードティラル国王レイザスが存在を認識しうる限りの場所に、魔物避けの結界を設置する為の礎を築いて実行に移したのも彼であり、それなりに魔力には自信がある。




…嫌な予感しかしない。



知らず眉間の皺を深くさせたレイガに、グレンが淡々と告げた。

「ひとまず1番損壊頻度が高い場所に、一昨日からティリスとアルビオを偵察に向わせてはいます。
…そろそろ戻って来る頃合いかと」

「…そうか」

ふむ、と頷き、レイガが机の上の紅茶のカップに口を付け、口を濡らす程度に口に含んだ時。
まるで見計らったように執務室の扉が開いた。


「陛下陛下陛下陛下へいかぁぁぁぁ〜!!!」

一際明るい少年の声が、ピリッとした執務室の空気を砕いた。
開け放たれた扉の方を見やり、グレンがジロリとした目をして声と共に部屋に飛び込んできた彼に苦言する。

「…ティリス。
陛下の御前で騒々しくするなといつも言って」
「あっ、グレンさん、ご苦労様でっす!」

「…貴殿、」

「ちょっと聞いて下さいよぉ!見回り終わって、アルビオと さっ、帰ろっかーって言ってたらぁ」

「……っ、」

心なしか青筋を立てているグレンをよそに、いつもの事で慣れているのか、レイガは軽く、気の抜けた様に口元を緩ませ、改めて紅茶を口にした。
構わずテンション高めに話し続けようとしたティリスの肩を、続いて後ろから部屋に入ってきた背の高い青年が、ポンポンと叩く。

……ティリス…落ち着いて、話せ…

「あっ…、そうだね!ゴメンゴメン☆」

テヘッとハニカミながら、背の高い青年…アルビオの言う事をすんなりと聞くと、ティリスは先程までの高いテンションをほんの少しだけ落として改めて話し始めた。

「で、どこまで話したっけ……
…あ、あーそうそう、帰ろっかって話してた時のトコまでだっけ?
でね、話してたらさ、
何と森の奥からラシェ様とクライド殿下がやって来てさぁ」

「?、?!…ちょ、ちょっと待てティリス…、じゃあ今、殿下が城に戻られていると言う事か…⁈」

「え、あ、…うん☆」

ケロッと言われた言葉に、グレンは心なしか顔を青褪めさせて目を吊り上げた。
レイガも流石に手を止めてカップを机に置く。

「何ぁ故それを、早く!簡潔に!まず最初に言わんのだ貴殿は…!
あ、ああ、しかもラシェリオ殿もご一緒となれば、何も持て成す準備が出来ていないのだぞ!」

…グレン…それなら…、大丈夫だ…

ティリスに半ば掴みかかっているグレンに、後ろからアルビオがボソボソと声を掛けた。

「何が大丈夫だと言うのだ、アルビオ」

準備、とやらなら…、ワーロックがしてる…

「?…ワーロックが?」

アルビオの言葉に、グレンが更に眉を吊り上げた時、執務室の扉がキイッと少しだけ開いた。
そこから、クライドがバツが悪そうに顔を覗かせる。

「あ、あれ…?ひょっとしなくても…今マズかった?」

「!!!!殿下ぁッ!」

クライドの姿を見るなり、グレンはティリスに掴みかかっていた手を離し、すぐさまツカツカと強い歩調でクライドの前まで歩み寄った。

「殿下、お帰りなさいませ…」

「た、ただいま…?」

「…殿下…一つ宜しいか?」

「は、はい…ナンデショウ…?」

「殿下はご自分の家に帰られるだけ、かもしれませんが…。
殿下はなにぶん、城を開けられている事が多い身。帰城の際、…特にラシェリオ殿を伴われてのご帰還は、前もって伝令の一つでも寄越して頂きたい!」

「ごめんごめん、次は気を付けるって…」

クライドはグレンの言葉にヘラっと苦笑して答えた。
グレンは ハァァァと海より深そうな溜め息をつく。

ちなみに、
このやり取りは毎度の事だ。

そして、決まってグレンはこう続ける。

「…いいですか。
シェリオ殿は、殿下のみならず、陛下や我々グランローグ全ての臣下においても、貴方様にとって『大切なお方』である時点で最早『大切なお方』なのです!
万が!
一にも!!
粗相があっては王家の名が廃ります!!!!」

「いや、そんな構えるのもさ…」

「我が国の!正統なる!王位継承権を持つ王子の!!『大切なお方』!!!
違い!ますかっ⁈⁈」

「…ち、違わないです…」

「全く…。ラシェリオ殿はとてもお優しいお方。ですが、それにいつまでも甘んじていては困りますよ殿下」

「…わ、わかってるよ…。
おんなじよーな事、ワーロックにもさっき散っ々、聞かされたし…」

半ば げんなりした顔でクライドが大きく溜め息をつくと、グレンは「当たり前です」と鼻息を荒くした。
そして、あっと声を上げる。

「はっ、ああいけない、まずはラシェリオ殿のところへご挨拶に伺わねば…」

だが、それは杞憂に終わる。

部屋の出入り口で話していた2人を、部屋の外から2つの顔が覗き込んだ。

「それには及ばないよ、グレン殿。ここにお連れしてる」

その声に部屋の外を見ると、声の主である1人の青年とラシェが、出入り口で話し込んでいたクライドとグレンの様子を窺っていた。

…心なしか、ラシェの顔が紅い。

それが何故かと気付かないグレンは、ラシェの方へと進み出て、部屋の中へと促した。

「ようこそおいで下さいました。こちらまでご足労頂き恐縮です。執務をしている部屋ですが、陛下もおられます。どうぞ中へ……と…、おや、ラシェリオ殿、もしやお疲れですか?お顔の色が…」

「だ、大丈夫。えっと…失礼します」

ラシェは話を逸らすように そそくさと部屋の中に入っていく。
即座にレイガの所までエスコートする任に就いたグレンを見送り、クライドが半ば呆れ顔でワーロックに尋ねた。

「…俺とグレンのやり取り、…どこから聴いてた?」

ワーロックは やれやれと肩を落とし、アスラーンである彼の目の下のクマを気持ち濃くさせた。

「『ラシェリオ殿は、殿下のみならず、陛下や我々グランローグ全ての臣下においても』あたり」

「……う、わ…一番聞かせ辛い話んとこじゃんか…」

「グレン殿は声が大きいからな」

「どーすんだよ…ああいう話聞いた後のラシェ、暫く恥ずかしがって俺の事近寄らせてくんないんだけど」

「ラシェリオ様が殿下をきちんと意識してるって事じゃないか。
そもそも、殿下がラシェリオ様を早く娶れば良い話…」

「わああああああああああ〜」

クライドはわざと聞こえなかった様なオーバーなフリをして部屋の奥へと入っていく。
ワーロックはやれやれと肩を竦めた。

「全く…殿下には困ったものだ…」






******

「…見て欲しいもの?」

執務をひと段落させてレイガ達がひと息ついたのを見計らい、クライドは、ラシェをワーロック達に任せ、レイガと2人きりにして貰い、彼にある物を見せた。

古びた、紙切れ。

それは、フィアルの丘の秘密基地で見つけた、あの古代文字が殴り書きで記されたもの。

「…『誰か 私を 助けて』…?」

レイガは苦も無くその古代文字を読み上げ、眉をひそめる。

「あまり良い内容の走り書きとは思えんな…。しかし、グランローグの古代文字など久々に見たわ…。
これは一体どうした物だ?」

「それ、フィアルの領地で先月見つけたんだ」

「我々ですら久しく使わない様な古代文字を、そんな直近で…?」

レイガは訝しげに切れ端を眺めた。

「…しかも、グランローグではなく、フィアルで…か」

確かに殴り書かれたその文字は、紙の古さと相反して比較的新しく見える。
何より、その使われているインクには違和感があった。
レイガはふと、切れ端を両手で挟む様に包み持ち、静かに目を閉じて何かを探る。
ややあって、彼はスッと目を開いた。

「…やはり、このインク…、アルビダの血…だな」

「アルビダの血?」

他国はどうあれ、
遠い昔、人間や精霊属によって迫害されていた妖怪属が寄り集まって形成された経緯のあるグランローグは、事 妖怪属の血や身体の一部を媒体として作られた物品を、過去の迫害を象徴する物として忌み嫌い、忌避する傾向がある。

…ただ一つ、例外を除いて。

レイガは手にしていた切れ端を机の上に置き、深々とため息をついた。

「あまり考えたくは無かったが、コレがアルビダの血で書かれた物である以上、『新生魔族』の仕業と見て間違いない様だ」

「……」

あの殴り書きされたあの古代文字を見た時、とても嫌な感じがしたのは それでか。
クライドは妙に納得した。

グランローグの皇族は、『魔族』である以上 様々な妖怪属の血を受け継いではいるが、その中でもアルビダの血を濃く受け継いでいる血統の一族だ。
アルビダたる者が、アルビダの血を道具として使う事は本来なら有り得ない為、特にクライドやレイガは忌み嫌っている。
…長らくそんな事には出くわさなかったので、クライドは気付かなかったのだ。
しかしながら、そんなグランローグでも妖怪属の『カラダ』の『道具』を平気で使う者たちがいる。
それが『新生魔族』だ。
先代のグランローグの皇帝が『魔物』を創造してしまうという自身の“呪い”を利用し、作り出した『魔物』を大陸中に解き放っていた頃。
その魔物の中の、皇帝の意志から外れて動く『知能を持った人型の魔物』が、あろう事か『魔族』と交わり生まれた存在。
彼らは かの『黒竜神』を崇拝し、
遠い昔、自分達を排除して『魔族』という『雑種』を形成させる原因を作った 人間や精霊達を恨み、レイガやクライドが目指す、多種族との共存の道を拒み、かつての『帝国・グランローグ』を再興せんとする者達で、度々 温厚派のグランローグ人を誘拐したり、人里に下りては町を襲ったりしている。

レイガは、最近国境の結界が破壊されているという話をクライドに話した。

レイガの張る結界は強力なもので、『新生魔族』や『魔物』をグランローグから出さぬ様、国境の森を境に強固に張り巡らされている筈なのだが、それを破壊されたとなると…。

「…考えたくはないけど、
ここ最近で、兄さんの張った結界を破る程 強い魔力を持ったヤツが現れたみたいだな…」

クライドは 思わず顔を顰めた。
その言葉に、レイガもコクリと頷く。

「…仕方がない。
…クライド、せっかくお前がグランローグに来たタイミングだ。私が国境の結界を張り直す手伝いをしろ」

「うぇ…マジか」

「何を言っている。お前は大使の役割の前に、我が国の正統なる王位継承権を持つ王子だ。たまには我が為に働け。
…どうせ明日には早々にコードティラルに向け出立するのだろう?」

「まあ、そうですけど」

「では、お前達が帰途に着く際同行しよう。凶悪な魔物がウロついていると分かっている以上、…お前はともかくとして、ラシェリオが心配だからな。
正統なる王位継承権を持つ弟王子の『大切な君』に何かあっては大変ではないか」

「…兄さんまでそれ言うの、やめない?」

クライドがゲンナリとため息をつくと、レイガは ははは!と声を上げて笑った。

「許せ許せ。
私も早く『妹』が欲しいだけだ」

クライドは サラッと言われた言葉にぐっと唸った。
まぁ、あまり笑う事の無い兄が笑うなど喜ばしい事だが、…どうにも解せない。

「……兄さんこそどうなんだよ…国王だろ?俺がどうのより…」

クライドの言葉に、レイガは薄っすらと笑う。

「…我の女人を思う恋心など、先の戦争でとうに捨てた…。
恋心抱けぬと…愛情が持てぬと分かっていながら妻を娶るなど、相手に失礼であろう?
…なぁに、私が結婚せずとも、お前達が一緒になってくれれば 我が国は安泰だ」

「何だよそれ…」

「我が心配など不要、という事だ」

穏やかな顔でそう答えつつも、それ以上は答えないというレイガの意思をクライドは感じ、それ以上は突っ込んで尋けなかった。


******

翌日、
昨日の申し出の通り、レイガが国境の森までクライドとラシェに同行する事となった。

「…そういえば、レイガと一緒に城外へ行くの、初めてね」

行きと同じくクライドの馬に揺られながら、ラシェが嬉しそうに笑った。

「おいそれと、私が城を空ける訳にはいかぬからな。…今回は、仕事ゆえ」

クライド達の乗る馬の隣に 自分の馬を並走させながら、ラシェの言葉にレイガは優しく笑った。
クライドも そういえばと頷く。

「確かに、俺も久々かも。
昔はよく、2人で遠乗りしに行ったもんだよな」

「ああ、母上がまだ御存命であった頃か…
そうだな、2人で城を抜け出しては、よくワーロックに見つかり、グレンに叱られたものだ」

「クライドさんは何となくそんな感じだったのかなぁと思うんだけど…レイガもグレンに叱られてたの?…何だか想像したら可愛い」

「何で俺はそんな感じだったって思うんだ…」

クライドが軽くムゥとして見せると、ラシェはふふふ、と楽しそうに笑った。
レイガはそんな2人を見て穏やかに笑む。

「もう、夢の様に昔の話だ。
…懐かしいな」

「そうだな」

2人の母は、グランローグが大陸中に戦争の戦禍を撒き散らす少し前に亡くなっている。
彼女は人間の里から逃げる様に流れ着いた生粋のアルビダで、透き通るような真白い肌とその肌に映える鮮やかな赤い血、そして白金に輝く美しい髪は、アルビダが主血統であるグランローグ王家にすぐさま拾われ、クライド達の父である前皇帝にとても寵愛されていた。
妖怪属の混血の成れの果てであるグランローグ人には、何故か元来 女人が少なく、同じ種族間での種の繁栄が難しい種族だ。
その為、グランローグ王家の王は種族問わず必ず数名の妃を娶る慣わしであるが、クライド達の父は、2人の母以外を娶る事はなかった。

それほどまでに、2人の母は美しく、そして優しく聡明な女性だった。

思えば、父王の気がふれてしまったのも、そんな妃を愛し過ぎてしまっていた所為なのかもしれない。

「…お妃様、本当、お綺麗な方ですよね」

グランローグの王城内には、2人の母の肖像画が何枚か飾られている。
恐らく2人の父が絵師にこぞって描かせたものなのだろう。
戦争中は何故か父王が宝物庫にしまい込んでいたが、
王城を再興するにあたり、宝物庫にあるものを整理している時に見つけ、以後、せっかくだから飾ったら?とラシェが提案したので今に至る。

「残念ながら白金の髪は受け継がなかったな、あの髪こそ母上の象徴であったのに。黒い髪も紅い目も…全て王家の物だ」

「ああでも、顔は母さん似だよな、俺ら」

「ふふ、そうですね」

元より彼ら2人の顔立ちは良く似ているが、確かに肖像画の王妃の顔立ちによく似ているかもしれない。



3人がそんな風に話しながらしばらく雪道に馬を走らせていると、やがて国境付近の森林地帯に着いた。
結界が破壊された場所はフィアル寄りに集中していて、クライドとレイガは、グレンがまとめた資料を頼りに、念入りに結界の破損状況を確認していく。

「…ふん…破り方に少々強引さは有るが、やはりこれは誰か1人の仕業の様だな…」

「ああ…」

ひとくちに結界を破ると言っても、通常そうそう破られてはならないよう、強力な魔法使いが結界を張る為、それを破るにはそれを上回る相当な魔力が必要となり、また、仮に強引に破こうとすれば、どうしても魔力の痕跡が残ってしまう。魔法の使い手 各々が宿す魔力とは、一つとして同じ物は存在せず、いわば指紋のようなモノであり、魔力の痕跡…つまり残滓さえ残っていれば、その者の魔力の気配を探る事が出来、大抵は犯人が特定出来るものなのだ。
これ程大掛かりな結界を破くとなると、複数名の関与が疑われるのが常だが、感じ取れた気配は 一つ。

「…兄さんに匹敵する程の、魔力の持ち主…か」

だが分かるのはそこまでで、いくら残滓から気配を探っても、2人が思い当たるフシのある存在とは一致せず、途中で気配が立ち消えてしまう。

「…何だろう、気配が途中で消えるという感じより、瞬間的に大気的なモノに同化してしまっている感じがする。
…というか…」

クライドは怪訝そうに顔を顰め、顎に手をやり考え込む。

「…何て言うか…。俺や、兄さんの魔力に近い気がしないか」

そんな怪訝そうなクライドの言葉に、レイガも訝しげに静かに頷く。

「お前も、そう思うのか…」

近しい血族ならば、自ずと魔力の型も似てくる。それは自然なことだ。
だが、母はとうに亡くなっているし、父王も先の戦争で死に、遠縁にあたる側近のアルビオを除いては、王家に2人以外の血族は既に居らず、だがアルビオの魔力は系統が違う為に決して酷似しない。

2人と似た魔力を持つ者は、本来ならば今現在 存在しない筈なのだ。

まして2人の魔力は、グランローグはもちろん、このリーフリィ大陸においても高い法力を誇るレイザスや精霊属と並び、随一の力を誇る程。
その魔力を凌駕する、となると…。

「どうにも、あまり良い雲行きを感じぬな。…一撃で破壊されている訳ではないが、2人で結界を張り直したところで…また破壊されるのも…もしや、時間の問題かもしれん」

「時間の、問題…」

レイガの言葉に、クライドはギリ、と唇を噛んだ。
とすると、急場凌ぎになるかもしれないが、急いで結界を張り直さなくては、内地に魔物が流れ込んでしまう。
クライドとレイガは、特に打ち合わせもせぬままながら、示し合わせたように結界を張り直す作業に取り掛かり始めた。

そんな2人の邪魔にならぬよう、待たせた馬達と共に少し離れた位置にいたラシェは、ふと、頭上で何かがチカッと光ったのを見つける。
…目では何も見えない。

「(え…何だろう、…気の所為?)」

ラシェは見間違いかと小首を傾げるが、

…チカッ、チカッ、、、

また光った。
そういえば、白い光では無く、黒い光。
しかし、クライドもレイガもそれには気付いていない様だ。

「…あ、あの……」

流石に変に思い、ラシェは作業する2人に声を掛けようと、そう声を出した。
…だが。

バチンッ

先程からチカチカ光っていた場所からだろうか…一つ大きな音が鳴り、突然黒い光が大きく空間を裂いた。
瞬間、現れた裂け目から黒い何かの影がガバァッと身体を伸ばし、一瞬にしてラシェの腕を掴む。

「⁈き、きゃああ!!!」

突然上がったラシェの悲鳴に、クライドとレイガは驚いて振り返る。

「…⁈」
「な、…⁈⁈」

見れば、ラシェが何も無い空間から現れたドス黒い影の様な人型の何かに腕を掴まれ、頭上に開いた不気味な空間に引き摺り込もうとしているところで、
見るや否や、瞬時に2人は飛び込まんばかりの勢いでラシェの元へ駆け付けた。

レイガが影に向かって魔法を放ち、クライドはラシェの腕を掴んでいる所に斬りつける。

「こ、んのやろぉ…!!」

斬りつけられた部分が思わずラシェの腕を離した瞬間、クライドはラシェを影から引き剥がし、躊躇わず直ぐさま抱き寄せる。

「ラシェ、大丈夫か⁈」

そのまま剣を構えつつ飛び退く様に後退すると、クライドは腕に納めたラシェに声を掛けた。
ラシェは声も無く、掴まれた腕を押さえつつコクコクと弱々しく頷く。
レイガも続けて、2人を庇う様に影との間に呪文の詠唱の構えで立つと、ギロリと影を睨んだ。
影はズルゥッと一気に空間から身体を伸ばし、2人を庇う様に立つレイガの眼前に広がる。

「…貴様、見ないタイプの魔物だな…?」

レイガがたじろぐ事なくそう言うと、影はカタカタと小刻みに身体を震わせた。
…まるで嘲笑っている様だ。
やがて影はカタカタと震わせた身体を止めると、スゥッと腕の様な影を伸ばし、ある一点を指差す。
クライドの腕の中で、弱々しく息をつくラシェの方を。
クライドはラシェの肩を抱く力をぎゅっと込め、ギッと影を睨み付けた。
レイガはそんなクライドに呼応する様に、掌に魔法の光球を宿し小さく詠唱を始める。

だが影は、一つ大きくユラリと身体を揺らすと、こじ開けた空間の穴と共にスゥッとその姿を消した。

「…彼奴、か…?」

再び姿を現さぬ様警戒しつつ、レイガは誰にともなく呟き、掌に宿した光球を収束させると、後ろの2人の元へ駆け寄った。

「…ラシェリオ、大丈夫か?」

駆け寄ったレイガにそう尋ねられ、ラシェはクライドの腕の中で苦しそうに ウゥ、と呻いて返す。
様子がおかしいのは明確で、クライドは既に対処を始めている様だった。
見れば、先程 影に掴まれていたラシェの腕が どす黒い痣に染まっている。
クライドは その腕を掴み、ブツブツと何かの詠唱をしていた。
詠唱が進むにつれ、少しずつラシェの腕の痣が薄くなっていく。

「『呪詛』、か…?」

レイガは直ぐさまクライドに倣い、ラシェの腕を掴むクライドの手に自分の手を重ねた。すると、それまでと比べて倍の速さでラシェの腕の痣が消えていき、ラシェからは苦悶の表情が薄れていく。

「よし、間に合った様だな…」

「…今の奴は一体…?あの一瞬で、俺と兄さんの二人掛かりで取り除かなければならない程の『闇』の魔力をラシェに叩き込むなんて…」

暫くすると、はあ…っ、と大きく息を吐き、ラシェが薄っすらと目を開ける。

「…っ、すみ、ません…」

未だ青白く冷めた顔で、ラシェが絞り出す様に声を出す。
クライドは少しホッとした顔をして、安心させる様に彼女の頭を撫でた。

「こっちこそごめん。さっきのヤツの気配、全く気付けなかった…」

「ああ…」

クライドの言葉に、レイガも済まなさそうに続ける。
先程の『影』は、ラシェは何か予兆めいたものを感じた様だったが、クライドとレイガには、正に突然音も無く現れた存在だった。

ラシェは心配そうに自分を覗き込む2人に、少し荒く息を吐きながらもニコッと笑ってみせた。

「…少し、楽になったから…もう大丈夫……。…ただ、ごめんなさい、少し…だけ…」

ラシェはそれだけクライドに言うと、すうっと目を閉じ、そのまま眠り込んでしまった。
クライドは、腕の中で眠ってしまった彼女を、思わずギュウッと抱き締める。

ラシェは『闇』の力とは正反対の『光』の魔力を宿す人間だ。

明らかに、先程叩き込まれたのは 普通の人間でも致死量の量の魔力で、2人が直ぐに叩き込まれた魔力を吸い出さなければ、…正直どうなっていたか分からない所だったろう。

レイガはポン、とクライドの肩を叩き、立ち上がった。

「クライド。コードティラルにはもう少し滞在させると伝令を送る。…ここからなら我が城に戻った方が近い。
一度グランローグに戻り、ラシェリオを休ませよう」

「…あ、ああ」

クライドはハッとする様に顔を上げ、レイガの言葉に従って ラシェを抱き上げながら立ち上がる。

その時、
クライドの腕に抱かれながら眠るラシェが、ポツリと小さく呟いた。

「…テリィ…お兄ちゃん…、
どうして…」

…と。









つづく


補足

久しぶり過ぎの本編ですので宜しければどうぞ↓
(第一話)
yourin-chi.hatenablog.jp
(第二話)
yourin-chi.hatenablog.jp

(↓そもそも黒竜神や依り代って何ぞ?)
yourin-chi.hatenablog.jp

おわりに

お久しぶりのヴィランズです。

やっと事件が起こせました(笑)

あ、ラシェは大丈夫だよ、




…た、多分…?(こら)


ここからが本番なんですが、
次こそは自警団メンバー出せるかな…
新キャラ出しちゃったもんな…
(他人事)

グランローグの側近4人組ですが、
Twitterで軽く載せてたやつを
せっかくなんでこちらにも載せたいと思います。

●側近筆頭・グレン

主血統→サターニア
お堅い忠臣。いつも怒ってる。

ワーロック

主血統→アスラーン
クライドの元側近。クライドとは乳兄弟。

●ティリス

主血統→サムサール(「罪悪感」)
ラシェが大好きなちびっ子側近。

●アルビオ

主血統→竜人
無口系。ティリスと組んでる。

グランローグ人は妖怪属の吹き溜まりなので、
一応主だった種族を1人ずつつくり、
要職につけてみました。
みんなラシェの事が大好きです。
お姫様扱いしてます。

ちなみに原案から引っ張ってきたのは
ワーロック君だけです。
(やってる事は一緒)
話が進めばもう少し各種族らしい感じも出せるかな…





さて、
多分こちらで年内書き納めです!
年内に上げれて良かったぁぁぁぁぁ
(´▽`)ホッ

来年の抱負としましては
「他国と頑張って交流する」
でしょうかね…

おばちゃん噛み付かないから
気軽にうちの子達と遊んで下さいね…
(噛み付かないけど食い付くよ)

でわでわ良いお年を!




(か、描き納めは
まだしてないんだからねっ!←希望)







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