テキトー手探り創作雑記帳

個人的な趣味なモノを、書いたり描いたり

ちょっとしたSS・5『騎士の誓い』

はじめに

今回は原案の小説から
かなりシリアスなお話を抜き出してみました。
ラシェが、本当の意味で
クライド達の仲間となったお話です。

宜しければお読み下さい(^^)

相変わらず中途半端から始まり、
中途半端に終わります(^^;)
※細かい説明いらねーやい!って方は、
目次から〔 オリジナルより抜粋『騎士の誓い』〕を選んで飛んでください。
【目次】

登場人物

少し設定は違いますが、『PFCS』に参加させていただいてる子達でもありますので、
良ければこちらを参照して下さい。↓
【PFCS】うちの子達。と、竜神様の試練、加勢します! - テキトー手探り創作雑記帳
【PFCS】女の子描くのが楽しい件。 - テキトー手探り創作雑記帳
(早見表を早よ作らにゃ…)

『PFCS』参加者様への注意事項

◉以下のSSは、『PFCS』に参加させていただいてる子達の元ネタのお話から一部を抜粋して載せています。
◉魔法の概念や世界観など、『PFCS』用には書き起こしてません。過去に書いたオリジナル小説からそのまま打ち出しています。
この世界では、『闇』と『光』の魔法は なかなか使い手がいない為、特別扱いされてます。
◉文章中の単語について
『サガ』→『クライド』
『クォ』→『クォル』
『ラミ』→『ラミリア』
◉コードティラルとグランローグがまだ戦争をしている時期のお話です。
『PFCS』にはその後の平和になった国での彼らを参加させているつもりです。
実は個人的に、彼らのアフターストーリー的に楽しませて貰ってます。てへ(´>∀<`)ゝ
◉あくまで、彼らや町の雰囲気の参考程度に読んでいただければ幸いです。
(口調などは『PFCS』では誇張して表現しています。クォルは『PFCS』では基本『俺』ではなく『俺様』です(^^;))

上記をご理解の上、お読みいただければと思います。
ややこしくてスイマセン(^^;)

実はこの話の直前はこちら

yourin-chi.hatenablog.jp



オリジナルより抜粋『騎士の誓い』



サガ達が城下から戻ると、パーティが盛大に始まった。

キラキラとした音楽。

異国生まれのラシェにとっては珍しい料理の数々。

城下でそうだったように、今度は城内勤めの兵士や侍女たちがラシェを囲み、色々な話をした。

クォ達を始め、城のみんなが
城に来たばかりのラシェにいい所を見せようと、
剣舞したり、一緒になって踊ったり…。



暫くして。
ラシェは少し、広間の熱気が落ち着いた所で 広間からバルコニーの方に出て、夜風に当たりに抜け出した。

『…まるで、夢みたいだなぁ…。』

少し前までは 普通の平民で、フィアルでもお城に足を踏み入れるなんて、国王様の聖誕祭や建国記念のお祭りの時くらいしか無かった。

コードティラルの城の人はみんな優しい。

でもその分、
ふとした瞬間に泣きそうになる。

ここにいる事は嫌ではない。
嫌では無いが…。

『……全部、夢なら…いいのに…。』

バルコニーの手摺に手をついた瞬間、ふとそんな風に思い、ふいに涙が込み上げてきた。
それはそのまま 一筋になって頬を伝う。

『…おかあ…さん…。』

フィアルはどうなってしまったのだろう。
夜通し逃げていたが、
…正直、フィアルに魔物が来て、
母に逃がされた辺りの事は
あまり何が起きたのかは覚えていない。

…頭が、
それ以上を思い出そうとはしない…
できない感覚。

涙がまた一筋頬を伝おうとした時、
バルコニーは中庭に降りれる様になっているのだが…、その庭の奥の方から誰かが歩いてきた。
ラシェはハッとして慌てて涙を拭う。
バルコニーにいるラシェに気付いて、歩いてきたその人物が名前を呼んだ。

「…ラシェ?」

歩いてきたのはサガだった。
そう言えば、食事が一通り終わったあたりから姿がなかった気がする。

「お庭にいたんですか?」

ラシェは何事も無かった様にサガに声をかけた。
そう言われ、サガはコクリと頷く。

「ちょっと夜風に当たりたくてね。ラシェも?」

「はい。」

あいつら、呑んで騒ぐとしつこいだろ?
と、サガが先程までのラシェの状況を推測し、苦笑いしながらバルコニーに上がる。
ラシェはくすくすと笑った。

「…でも、皆さんとても優しいです。凄く、楽しくて…。」

そう言ったラシェの顔が一瞬悲しそうに見えて、サガは、ん?とその顔を見た。
…そしてその頬に何かを見つける。
何やら自分の顔をまじまじと見ているサガに、ラシェはおずおずと声を出した。

「あ、あの…サガさん…?」

「あぁ、ごめん。」

サガはハッとして視線を外すと、小さくふぅとため息をつき、おもむろにズボンのポケットから何かを取り出して、ラシェの手を取ってその手に乗せた。

「それ、ラシェにあげる。」

「…え?」

サガにそう言われ、ラシェは手の上に乗せられたものを見る。
親指の爪ほどの大きさの涙型の乳白色の石をペンダントトップにした、銀のチェーンのネックレス。

「ネックレス…?綺麗…。」

 ラシェがそう呟きながら石を手に取り、月明かりにかざす。
その石は、月の光にかざすと若干透けて見え、虹を落としたように七色に輝く不思議な色だった。

「あ、あの、これ…私が戴いていいんですか?」

 サガはラシェにそう言われ、うん、勿論!と頷いた。

「その石、『光』属性と相性がいいんだって。お守りだと思って使ってやってくれると嬉しいな。魔除けの石だよ。魔法屋の店長さんにネックレスにして貰って、んで、今さっき、ついでに魔力収束用の魔法詰めて貰ったトコなんだ。」

サガはニコニコと笑った。
どうやら、それでさっきまで少し抜け出していたらしい。
ラシェは嬉しそうにきゅっとネックレスを握り締めた。

「有難うございます、サガさん…。」

「喜んで貰えたなら良かった。…つけてみて貰ってもいいかな?」

サガにそう言われラシェは頷くと、ネックレスを付けてみた。
月の光で、乳白色の石がラシェの胸元でキラキラと光る。

「うん、やっぱりいいな。ラシェは白が似合うと思ったんだよね。店じゃ『魔法具』じゃないからお勧めできなかったんだけど…魔除けはあったに越した事ないし…。」

後半は若干、自分で言い聞かせるような感じでそう言いながら、サガはうーんと大きく伸びをした。

「…よし、渡すもんも渡したし…。さて、そろそろ広間に戻ろうか。いい加減止めないと、朝まで騒いでるからな、みんな。」

「はい。」

そう頷き、一緒に広間に戻ろうとしたラシェは、ふと足を止める。
それに気付き、サガも戻ろうとする足を止め振り返った。

「ラシェ?」

「…あ、あの、サガさん…。」

そう言って口を開くラシェの顔が、少し青冷めて見えた。
サガは思わず眉をひそめ、向き直る。
ラシェは声を絞り出すようにサガに言った。

「フィアルの…街の中…とか…どうなってるんでしょうか…。私…逃げてる時とか…逃げる前とか…その……全然覚えてなくて…。えっと……。サガさんしか…知らないんですよね…?だから…。」

「………。」

サガは少し口ごもり、そして、言いながら心なしか震えている様に見えるラシェの肩に、その震えを止めるようにそっと手を置いた。
ラシェはサガを見上げる。

「…サガさん…私…。」

そう声を出すラシェに、サガは静かに首を横に振った。
そして言い聞かせるようにラシェに言う。

「ごめん。今の君には…言えない…。……ただ、5日後、俺達騎士団と…何人かの兵士連れて、フィアルに行こうって話には なってるんだ。色々一人じゃできなかった調査もしなきゃいけないし、…何よりあそこを…あのままって訳にもいかないし…。」

「じゃあ、その時…私も一緒に…連れて行って下さい…!」

「………。」

サガは少し逡巡し、それから大きく息を吐いてラシェに言った。

「…ラシェはフィアルの人間だし、土地勘もあるだろうから、着いて来て貰えるなら調査は捗る。…君が、その…大丈夫なら…。」

「大丈夫です…。…私は…何もできずに逃げるので精一杯だった…から…。せめて…全てを見なくちゃ…。」

ラシェは震える唇を噛み締める。
そんな彼女をサガは眩しそうに目を細めて見つめ、その俯く頭を優しく撫でた。

「…まいったな…。辛いだろうから、なるべく思い出させないように…フィアルの話はしないようにしてたつもりだったんだけど…。…君は強いな。」

その言葉に、ラシェは俯いたまま言葉無くふるふると首を横に振る。
サガは困ったように笑って、俯く彼女の顔を覗き込むように身を屈め、その手を取って優しく言った。

「フィアルに行くなら、まだあそこは危険だろうし、ひとまずラシェの『魔力』を固定化できるようにならないとな。あとはそのネックレスが、ある程度魔力を収束するだろうし…。」

「…それって5日くらいで出来ますか…?」

「コツさえ掴めば2日くらいで出来る。完全に押さえ込むにはもう少し時間と儀式が必要だけど…、まぁ、そこまでしなくても、固定化さえ出来てれば、みんなで出歩くんだから問題ない。」

サガはそう言って安心させるように笑った。
つられる様にラシェが顔を上げ、うっすらと笑うと、サガは安心したように手に取っていた彼女の手を優しく握った。

「…よし、なら尚更、明日は朝から頑張る為にも、もうみんなのトコに戻らなきゃな。…行こう?」

「…はい。」

*  *  *
 
それから5日後。
サガ、クォ、ラミ、バトー、そしてラシェ。それから二十人程の兵士達を連れ、彼らは予定通りフィアルへとやってきた。

…酷い有様だった。
城下が広がっていたであろう地区は、色々な瓦礫が辺りに散乱し、家々が全て壊されて焼け焦げ、まさに焼け野原という状態で、…いたる所に魔物に襲われたであろう人々の遺体が無造作にそこら中に横たわり、異臭が鼻をつく。
ひとまず連れて来た兵士達を数人、遺体の収容と埋葬にまわし、サガ達は、クォとラミ、バトーと数人の兵士、サガとラシェの3手に別れ、更に街中の状況を区域ごとに分けて調査しようという事になった。

サガとラシェが向かったのは、ラシェの暮らしていた家のあった方角。
ラシェは、自然と…案内するかのようにサガの少し前を歩く。

「ラシェ…。」

サガが、ふらふらとした足取りで歩を進めるラシェを不安に思い、呼び止めようと声を掛けるが、耳に入っていないのか彼女は足を止めなかった。
…何かを探すように。
仕方なく、サガは辺りを警戒しながらラシェの少し離れた後をついて歩いた。
そして…
それから十分程歩いた頃だろうか。
ほとんど瓦礫でわからないが、あたりに散乱する物が屋根らしき破片が多く、おそらく住宅街だったと思われる場所を暫く歩いた所で、ラシェが急にびくりとして足を…体を止める。

「…ラシェ?」

その様子にハッとして、サガはラシェの傍に慌てて駆け寄った。
ラシェは 何かを見つめ、固まったまま動かない。
後ろから体を支えるようにその動かない両肩を抱き、サガはラシェの見つめる視線の先を追った。

「……っ!」

目線の先のその何かを見つけた瞬間、サガはそれから目を逸らせずにいるラシェを、体ごと強引に向きを自分の方へ向かせ、無理やり腕の中に抱き込んだ。
そうした瞬間、ラシェの身体がサガの腕の中でガクガクと震えだす。

「(あんまりだ、こんなの…!)」

サガは、そう唇を噛み締め、腕の中で激しく震えるラシェの身体を思わず強く抱き締める。
…ラシェの目線の先には、何人かの人間の、見るも無残な遺体があった。

その、一つ。

あまりに特徴的な、…銀色のような薄い菫の色をした長い髪の女性らしき人。
…それは、今、自分の腕の中にいる少女と…同じ色の髪。
一目で、ラシェの近しい人だと判った。
その人が、傍の数体の遺体と同じ様に、見るに耐えない状態で横たわっている。

「…おかあ、さん…おかあさん…。」

腕の中で、ラシェが何度も繰り返す。

「(あの人…やっぱり…ラシェの、母親…か…。)」

抱き締める腕に自然と力が籠もる。
腕の中でラシェが、自分にしがみ付く様にして肩を震わせた。

「(…ラシェ…やっぱり連れて来るべきじゃ、なかった…。判ってたのに…。)」

サガは腕の中の少女を思い、唇を噛み締める。

「ラシェ、我慢しなくていい…思いっきり…泣いていいよ…こうしてるから。」

そう促され、静かに泣いていたラシェは次第に嗚咽を始めた。
それはやがて悲鳴にも似た嗚咽に変わる。

胸を突く、声。

静かな辺りにただそれだけが響き渡る。

「(…ごめん、力になれなくて、ごめん…っ。)」

サガには ただ抱き締めてあげる事しかできなかった。


それから…。
自分達のまわった持ち場のある程度の調査や埋葬の手配を終えたクォ達が、集合場所への戻りの遅いサガとラシェの方へ来て合流し、
その事態をのんで、代わりに埋葬を行っている。
あの後、ラシェはひとしきり泣いて、気を失うようにサガの腕の中で眠ってしまった。
今は、瓦礫の少し片付けられた廃屋の軒下に座っているサガの肩に、身体を預けて眠っている。

「…ラシェ、あまり眠れてなかったみたいなのよね…。」

作業が一段落ついたのか、ラミがやってきて、ため息交じりで2人の前にしゃがんで、その膝に肘をついた。

「お疲れさん、ラミ。…作業、代わろうか?」

「んーん。私はまだまだ全然大丈夫よ。あとちょっとで全体的に一息つけるしね。…それより、あんたは その子、見てあげててよ。」

「…俺よりラミの方が良くないか?」

「なぁに言ってんの、よ。……さっきの、」

そう言いながら、ラミはサガの肩に身体を預けて眠るラシェの頭を優しく撫でた。

「…向こうにいても…聞こえた…から。…色々あって、知らないとこで、知らない人に囲まれて…。気を使わなくちゃいけない事ばかりで…ずっと泣けずにいたんじゃないのかな…とか…。気にはなってたのよ。ここに来る直前5日間も、考え事とかそういうのしないようになのか、無心で魔力の固定化に打ち込んでたし…。」

「…一人で泣いては…いたみたいだよ。この前のラシェの入団祝いの時、…泣いた跡があったの見たから…。」

サガはふと、魔除けの石を渡してあげた夜の事を思い出した。
…あの日、ラシェは一人バルコニーで泣いていたみたいだった。
頬に、涙を流した跡が少し残っていたから…。

「泣いてると、みんなに心配されちゃうのが嫌だったのかな…。そりゃ心配になるけどさ…。でも、押さえ込んでたって…無理だ、あんなの…。」

サガはラシェが寄りかかっていない方の手の拳を、悔しそうにギュッと握る。
それを見て、ラミはラシェを撫でる手を止め、サガを見やった。

「フィアルでラシェを助けたのがあんただったから、だろうけど…。今のとこ、ラシェが一番安心してるのはあんただわ。…じゃなきゃ、あんなに心から泣けない。…だから今は、あんたが傍にいてやんな?
あんたはクォとは違うから野暮な事しないでしょ。…安心できる場所があるなら、そこに居て貰った方が、私はいい。」

「…そう、なのかな…。」

「そういうモンなの。
…さて、様子も変わり無いみたいだし戻るわね。…終わったら、呼びに来るから。」

「………判った。」




言われなくても…見なくても…
判ってた事だから、覚悟はしていた…
それでも、実際にそれを見たら
…身体から…ごっそり心臓が引き抜かれた様な…、
そんな不思議な感覚がして動けなくなった。
思い出さないようにしていた頭が急に動き出して、
腕も足も動かなくて
声すら出なくて…
…サガさんに抱き締められてようやく身体が動いた。
現実を理解し始めた思考の所為で
身体が震えるのが止まらない。
震えるだけの私に
泣いていいよと言われて
…初めて
泣けばいいんだという事に気付いた…

ああ、そういえば
声を出して泣いたのなんて
子供の時以来だな…



ラシェはぼんやりと目を開けた。
少し離れた所から色々な人の声と大きな物を次々動かすような音が聞こえる。

『私、どうしたんだっけ…。』

ぼんやりと、いつの間にか泣いていたらしい、頬に伝うその涙を拭おうと腕を動かそうとする。
しかしその前に、その涙は誰かに拭われてしまった。
ラシェは思わずハッとしてはっきりと目を覚ます。
目の前には、自分に寄り掛かられていない方の腕を伸ばし、ラシェの涙を拭ったサガの心配そうな顔があって、ラシェは一瞬きょとんとした。

「…大丈夫?」

やけに近い…心配そうな顔のままのサガにそう言われ、ラシェは一瞬何がだろうと思い、…そこでハッとして気付く。

『私…っ、サガさんに凭れ掛かってるっ!』

それに気付いて、慌ててその体勢から直ろうとして身体を離した瞬間、頭がクラッとして、そのまま身体が後ろに倒れそうになる。

「!っえ、ラシェっ?!」

それをサガは慌てて引き寄せて、もう一度自分の方に寄せた。

「…はぁ…びっくりした。急に動いたら駄目だよ、起抜けなんだから…。」

安堵のため息をつき、サガはラシェの頭を片手で抱え込むように、また自分に寄り掛からせた。

『ど、どうしよう、事態が飲み込めない…!』

眩暈の治まったらしいラシェが自分の腕の中で呆然としているのに気付き、サガは優しく笑った。

「ラシェ、あのまま眠っちゃったから、ここで休んでただけだよ。瓦礫やらで凄いし、そのまま地べたに寝させる訳にもいかないし…
俺が枕でゴメンけど。」

「い、いえ!そんな!こちらこそゴメンなさい!もう、大丈夫なので…っ。」

そう言って再び身体を起こそうとするラシェの動きを、抱え込んでいる腕で制した。

「駄目。……ここ暫く、きちんと眠れてなかったんだろ?」

「……!」

「力抜いて…。座ってるだけでも楽になるよ。…暫くこうしてるから。」

そういって、サガは有無を言わさずラシェを寄り掛からせた。

「…ラシェを休ませないと、ラミに怒られるんだよ。…俺が。」

言い訳のようにサガがそう言ったので、ラシェは苦笑して、それから観念したようにサガの肩に身を委ねた。
そして、ラシェは改めて辺りを見渡す。

「ここら辺はそろそろ終わるよ。もうすぐ、クォ達が呼びに来る筈だ。」

ラシェの様子に気付き、サガが口を開く。

「瓦礫の撤去はある程度までだけど…埋葬は…もうじき。」

そう言って、サガは目線を遠くに向ける。
目線の先は、さっきラシェの母親達が倒れていた辺りだ。
何かを次々と運び出す兵士達やクォ達がいる。
ラシェはさっきの光景を思い出し、思わずサガの服の裾をギュッと掴んだ。
その手に、サガは空いている方の手をそっと重ねる。

「…やっぱり、連れて来ない方が良かった。」

サガがポツリと言った。

「俺は、襲われてからのフィアルを見てたから尚更…。何と言おうと、連れて来るべきじゃなかったんだ…。
ごめん、ラシェ…。」

それにラシェは慌てて首を振って否定した。

「謝らないで下さい!連れて行って欲しいってお願いしたのは私です。
…頭では駄目なんだって判ってても、気持ちが追いつかなくて、実際にこの目で確かめないと納得できなくて…。大丈夫かもしれないって気持ちが、私の頭の中を駆け巡っていたんです、ずっと…。大丈夫って思ってるから涙も出なくて、駄目だって思ってるから、知らない間に泣いてたりして…。
…でも、もう、大丈夫ですから…。」

「ラシェ…。」

「それに、連れて来て貰えなかったら、…一人で来てたかもしれません。
……でも、そうしてたら私…あんなに…泣けたんでしょうか…。」

ラシェが自嘲する様に弱々しく笑う。
そんなラシェの肩を抱いていた手に力を込め、サガは遠くを見つめたまま口を開いた。

「…一人で、なんて…無理だよ。
いいんだ…、ラシェは、一人じゃない。…そういう事なら、連れて来て…一緒に来て良かったって思う…。
こんな状況の場所に、一人で来させるなんて、俺達の方が耐えられないよ。」

「……有難う、ございます…。」

ラシェはそういって静かに目を伏せた。
と、そこへ、一通りの作業を終えたらしいクォ達がやってくる。
肩を寄せ合って座っている二人を見るなり、クォがあからさまに口を尖らせた。

「あーっ、サガちゃんなんかずるくない、それ!」

ん、何が?と眉をひそめてクォを見やるサガに反し、ラシェはその言葉にハッとして慌ててサガから離れて真っ赤になって横を向いた。
それを見て、はぁと呆れた顔でため息をつき、口を尖らせるクォの横にいたバトーがクォの鳩尾に手刀を刺す様に食らわせた。

「うぐぉうっ!」

「このタコ!ラシェが寝てないみたいだから休ませとくって言ったろーが。」

「ぅぐ、っだ、だったら俺がこの腕の中で寝、む…のわっ!」

言いかけて、何か凄い音と共に勢い良くクォが顔面から前のめりに倒れこんだ。
見ると、倒れたクォの後ろで、ラミが何かを蹴り飛ばした様な体勢で構えを取って、倒れたクォを鬼の形相をして睨んでいる。
地面に打ち付けた顔面を摩りながら、クォがふらふらと体を起こして…吼えた。

「ほんっと!お前ら俺に容赦ないなっ!」

「お前の野暮が一番容赦ないわっ!」

「この唐変木!」

ぎゃいぎゃいと目の前で繰り広げられ始めた三人の口喧嘩に、赤くなって顔を逸らせていたラシェがくすくすと笑い始めた。

「おいお前らー、ラシェに笑われてるぞー。」

サガにそう言われ、えー、と3人がそれぞれ顔をしかめると、ラシェが慌てて謝った。

「ご、ごめんなさいっ、えっと、そのっ。」

いいよいいよ、とサガは慌てるラシェの頭を撫でる。
それから、サガは立ち上がり三人に尋ねた。

「…それで、終わったんだよな。」

その言葉に、三人は神妙な顔をして頷く。
サガは一つ大きく息を吐き、

「…ん、よし。それじゃあ、行くか。」

そう言いながら座っているラシェに向き直り、手を差し伸べる。
ラシェはハッとしてそれを見上げた。
…あぁ、そうか。
そう思いながら、ラシェはその手を取って立ち上がった。

「ちゃんと…全て見るって、決めてきましたから…。」

「…うん、行こう。」




そして、サガに手を引かれ、
クォ達に案内され、ラシェはやって来た。
住宅街から少し外れた場所にある開けた場所。
公園だったのだろうか…辺りの、倒れて焼け焦げた木々が痛々しく残るその場所には、簡易的に作られた墓標が幾つも立てられていた。まだ数人の兵士が埋葬作業をしている姿がある。
…その、一つ。
連れられてきた場所の墓標を、ラシェはぼんやりと見つめた。
立てられた墓標を優しく撫でながら、ラシェはポツリポツリと口を開く。

「早くにお父さんは死んでて、私にはお母さんだけでした。」

「…。」

「でも、寂しくなんか無くて、近所の人たちも国王様もみんな暖かくて…私は何も無くてもそれだけで…充分でした…。本当に、充分で…。」

ラシェの言葉に、四人はただ言葉なく見つめる。
また溢れてきた涙を止めないまま、ラシェはその場にへたりと座り込んだ。

「……どうして…っ。なんで…っ。」

そう繰り返しながら、ラシェがボロボロと泣き崩れる。
それを、ラミが後ろから優しく抱き締めた。
「ラミさん…っ…。」

「……ラシェのお母様、凄く綺麗な人ね。…そういえば、ラシェは凄くお母様似なのねぇ…、顔も、この綺麗な髪の色も…そっくりだった。いいなぁ…。」

そう言いながら、ラミは優しくラシェの頭を撫でてやる。

「あんな素敵なお母様の代わりにはなれないけれど…、ラシェは今、一人じゃないからね。…ちゃんと、傍にいて…、守ってあげる。寂しく…ならないように。」

そう言われてラシェはラミを振り返った。
ラミは、ねっ?と優しく笑って返す。
そしてそのまま、抱き締めてくれているラミの背中越しに、後ろにいたサガと、クォと、バトーを見た。
三人は見計らったように笑んで頷き、おもむろにそれぞれが腰の下げていた鞘から剣を引き抜いて、それぞれの剣を重ねるように空に掲げた。

「「「我ら、コードティラル神聖騎士団、今ここに誓おう。汝が娘、御身が代わりに必ずや守り抜くと!」」」

そう言って空に剣を掲げる三人に、ラミがそっと静かにラシェを離して立ち上がり、同じ様に腰に下げていた鞘から剣をすらりと抜き、掲げられた3本に重ねる様に掲げた。

「「「「誓おう!我らが騎士の、誇りと剣にかけて!」」」」

それは土の下に眠る母に向けた、誓いの言葉だった。
4本の剣が、太陽の光にキラキラと照らされて光る。
それがあまりにも綺麗に見えて、ラシェはまるで夢でも見ているような気分でそれを見つめ、それから涙を拭って立ち上がる。
そしてそのまま、剣を空に掲げたままの4人を、4人ごと抱き締めるように思わず抱きついた。

「っ!」
「え、ちょ…!」
「!っわ、ラシェ危ないって…!」
「わわっ!」

突然の事でバランスをそのまま崩して倒れかけたので、4人は慌てて危なくない様に剣をそれぞれ放って、その勢いのまま後ろに倒れ込んだ。
そして暫く呆然とする。

「あはは!積極的だなぁ!」
「…不覚…。」
「こ、腰打った…。」
「…ぃたた…、ラシェ…?」

それぞれ体を起こしながら、突然どうしたのだろうと、4人が自分達を押し倒した張本人に目をやる。
ラシェは倒れ込んだ体勢から体を起こしていて、相変わらず泣きじゃくっていた。

「ありがとう…ございます…っ、ありがとう……ゴメンなさい…っ…。」

感謝と謝罪の言葉を繰り返しながら。
4人は困った様に顔を見合わせ、苦笑いした。

「謝るくらいなら、こういうのは危ないから気をつけた方がいい…。」

トーがため息交じりで言うとラシェがふるふると首を横に振った。

「ちが、違うんです…、私…、…だって…。」

「大丈夫、判ってるよ。」

ラシェが弁解しようとするのを、サガが優しく止めた。
そう言いながら、なぁ?とクォとラミとバトーを見やる。
三人は当たり前だ、と言う様に頷いた。
ラシェが、え?と4人を見つめる。

「気付いてくれたんだろ?…まわりなんか気にする事無く、我慢せず、泣いてもいいんだって事。…悲しみが取り除ける訳ないけど、それでも俺達、傍にいるからさ。」

そうそう!とサガの言葉に頷き、おもむろにクォがラシェの手を取った。

「っていうか、ラシェちゃんの笑顔の為なら俺何だってするからねっ、…ぅぐっ!」

すかさずラミとバトーがそれぞれクォに鉄拳を放ち、クォからラシェを引っぺがした。
ラシェはその光景に、一瞬きょとんとして…そして、くすくすと笑い出した。

「あー、お前らの所為でまたラシェちゃんに笑われちゃったじゃんかー。」

クォが鉄拳をくらった場所を摩りながら口を尖らせた。

「お前が馬鹿な事してるからだろう。自業自得だ。」

トーがつっけんどんにそう言い放つと、ラミもそうそうと同意した。

「なんだよー。ラシェちゃんの心のオアシス!のこの俺が、ラシェちゃんの心を和ませてあげようとしただけだろー。」

「手を握る必要は無い。例え手でも女の体に気安く触れるな…。
ラシェも嫌なら断らないと、…こいつ、これから先、ずっとこの調子だからな。」

「とりあえず、当面はクォの魔の手から守ってあげるからね、ラシェ!」

「うわ、ひっどいな!何だよ、俺がまるで節操なしのケダモノみたいな扱い!」

「「「違うのかよ。」」」

声を揃えるラミとバトーに、サガもそれに声を揃えてクォに言う。
それがあまりにも綺麗に揃って、ラシェが更に楽しそうに笑った。

「みなさん…っ、もう…面白いです…っ。」

「えーちょっとラシェー。面白いのはクォだけって事にしてよー。」

「だ、だって…あはは…っ。」

もー、と、笑うラシェの頭をラミがぐりぐりと撫でる。
その様子に、サガはバトーとクォと顔を見合わせて安堵した様に苦笑した。

「…ま、ひとまず大丈夫なんじゃないか?」

「うんうん、素敵な笑顔でお兄さんは嬉しいよ!」

「そうだな。」

そう頷きながら、サガはゆっくりと立ち上がり、先程それぞれが放り投げた剣の一つ拾い上げる。
それは、サガ達コードティラル神聖騎士団が使う、儀礼用の剣。
どうしても…少しでもラシェの心の傷を埋めたくて、ここでみんなで誓いを立てようとみんなで示し合わせて持ってきた物だ。
サガはその柄をギュッと握り締める。
…思い出すのはフィアルの森での事だ。

「(…やつらは…、汚点を許さない…。ただの一つも…。)」


『ここで我らを退かせても結果は同じだぞ…黒髪!』
『我らは全てを根絶やしにする。』
『その娘の命も、必ず…!』

狙い続けるだろう。
アイツを、止めない限り…。
サガは、笑いあっているラシェ達の方を見た。
それはまるで、自分と彼らとの間には壁があるような…、どこか遠くを見つめる様な眩しげな眼差しで。

「(…守るんだ。)」

サガはそう心の中で呟き、残りの剣も拾い上げ、再びラシェ達の方へ歩み寄った。

「…そろそろ残りの作業に戻ろう。日が暮れる。」

「はーい!」

元気良くクォが答えると、サガが拾った剣を一つ受け取り、自分の鞘に収めた。

「そーね!冷え込まない内に帰らなきゃねっ。」

「よし、もう一働きするか。」

クォに習ってラミとバトーもサガから剣を受け取り、先程まで作業していた持ち場の方へ足を向けると、クォもそれに続いた。
剣を渡し終え、サガはラシェに手を差し伸べた。

「俺たちも行こう?」

「はい。」

ラシェがフワリと笑って差し伸べられた手を取ると、サガはその手を引いてクォ達が向かった方へと自分達も向かった。
その手を、強く握り締める。

『守る…。絶対に…。』



が、守るんだ。




『騎士の誓い』・fin


実はこの話の続きはコチラ

yourin-chi.hatenablog.jp

おわりに

グランローグが大陸中に戦争をけしかけているあたり、
ラシェの故郷・フィアル国が滅ぼされた直後のお話です。

区切りがつかず
少し長くなってしまいました…。

この一件から、
ラシェにとって
自警団(原案では騎士団)の面々は
お兄ちゃん、お姉ちゃん
ひいては『家族』の様な存在になりました。
後は、
ここら辺からクライドに惹かれたり。

ちなみに
クライド(原案ではサガ)は
普段からあんな感じです
(´>ω∂`)☆

あんなんだけど
この時点じゃ
まだラシェが好きだとかじゃ無いんだぜ…
(罪悪感からの保護欲が強いだけ)

この原案を知っている私の友人達には
クライドは『天然スケコマシ』
などと呼ばれてました(´๐_๐)不本意…

…違うんよ…!
王子で世間知らずなだけなんよ…!(笑)
(グランローグは女性が少ないので
男性は女性の扱いに不慣れだったりが多く、
クライドも
女性にはとにかく優しくあれ、
と兄(レイガ)に教え込まれて育ちました(^^;))




さてさて
そろそろリアルが落ち着きそうなので
(一時的に(笑))
何かしら
ガッツリと絵が描きたいですねぇ
(´・ω・`)どうしよっかな

ウチのPFCS用キャラ早見表でも作るかなぁ。






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